MAISON BLUE

建築概要

主要用途:物販店舗、事務所、サービス店舗

延べ面積:428.55㎡

構造規模:RC造、地上2階地下1階建て

敷地について

本計画は、南青山五丁目における二棟目のプロジェクトである。

一棟目の「SEVENSTAR BLDG」は、青山通りと骨董通りの交差点という、街の中心とも言える場所に立つ建築だった。今回の敷地は、それとは対照的な場所にある。南青山五丁目の中でも高級ブランドや個性的なショップが軒を連ねるエリアの奥、街のランドマークであるPRADA表参道店の裏に隠れた、路地状の敷地である。

施主からの要望は、物販店舗を中心とした商業ビルをつくること。

法規制という制約から生まれた設計

路地状敷地には、いくつもの制約が重なっていた。

  • 東京都安全条例上、路地状敷地に計画できる物販店舗は200㎡未満に限られる
  • 3階建て以上で特殊建築物用途を含む場合、路地状敷地では計画そのものが成立しない
  • 隣地との高低差が2m以上あり、崖条例に該当するため、地階は隣地側に開口部を持たないRC造とせざるを得ない

これらは一見、設計の自由度を奪う制約に見える。しかし私たちは、この制約をどう建築的な解へと転換するかにこそ、設計の本質があると考えている。

建築としての提案

地下1階・地上2階、RC造。物販店舗200㎡、事務所90㎡、サービス店舗140㎡程度の構成とした。

地階は道路面から750mm程度床を下げ、天井高さは2750mmとし、開放できる前面空地側に大きく開口を設けることで、光の届く開放的な空間として地下を感じさせない計画とした。「一部が開口部のないRC造」という制約の中で、いかに閉じずに開くかを追求した。

ワンフロア150㎡規模の空間を、柱や梁型のない大空間として実現するため、正面ファサードのサッシ方立てそのものを構造柱として扱い、ボイドスラブを採用。これにより、テナントの内装計画における自由度を最大限まで引き上げている。

さらに準耐火建築物とすることで、三層吹き抜けでありながら区画を持たないテナント空間を可能にした。

また、路地状敷地の特性を活かし、建物の前面に35㎡程度の空地を設けた。周囲を建築に囲まれながらも、決して閉じた空間にはせず、建築と一体で使える開放的な場として計画している。奥まった路地状敷地だからこそ生まれる、街から一歩引いた「間」の空間。そこを通り抜け、建築の内部へと至る動線そのものが、内と外をゆるやかに繋ぐシークエンスとなる。

法規制や敷地の制約を出発点に、そこから空間の可能性を組み立て直す。それが私たちのやり方である。

都市への思い

建築とは、都市を形づくる要素のひとつにすぎない。都市の主役は、そこで営まれる人々の活動であり、建築はそのきっかけをつくる装置でしかない、と私たちは考えている。

建築を構成するマテリアルは、SEVENSTAR BLDGと同じく、鉄筋コンクリート・鉄・ガラスという無機質な素材のみで統一した。色においても黒などの強い色は用いず、建築としての主張は極力抑えている。

南青山五丁目という、すでに数多くの魅力的な店舗が息づく街であればなおのこと、建築が主役になってはならない。他の建築でも採用されているマテリアルで建築を構成することで、個を主張する建築ではなく、街の人々の活動にそっと寄り添う建築を、私たちは目指した。

学生時代の研究から続く問い

大学院生時代、私は都市空間における「路地空間のシークエンス」の研究を行っていた。

急いでいるときは最短距離となる道を歩くが、気持ちに余裕があるときなどは、自分の好きな道を選んで歩くのではないか。その好きな道を形成する要因とは何かを統計的に読み解き、人の動きや周囲の街とつながる建築を計画するためのヒントを得ようとする研究だった。

この関心の根底には、学生時代から抱いていた都市再開発への違和感がある。新しい街には新しいコミュニティや価値が生まれる——それ自体に反対する立場ではない。しかし同時に、過去の街が持っていたつながりやコミュニティが失われていくことに、私はずっと疑問を持ち続けてきた。

老朽化する都市において、再開発そのものは必要だと思う。しかし、すべてをリセットしてつくり替える方法だけが再開発ではないはずです。今ある都市空間を活かしながら、少しずつ更新していく——そうした再開発のかたちもあるのではないかと、私は考えていた。

そして今回、同じ南青山五丁目という街で、二つ目の建築を設計する機会を得た。

この先、再びこの街で建築を計画する時には、私が設計した二つの建築にとどまらず、都市の様々な要素との間に生まれるシークエンスまでを含めた空間を設計していきたい。それが、私なりの都市再開発への向き合い方であり、街に集う人々への、ささやかな貢献になればと考えている。